発言者:藤野保史議員(日本共産党) (ホームページ/Twitter/facebook)
日付:2021年5月12日
会議:第204回国会 衆議院法務委員会
○藤野委員 配付資料の一を見ていただきたいと
思います。これは菅総理が、昨年十月、総理就任
直後にベトナムを訪問した際のスピーチです。黄
色く塗っている部分。「アセアン各国から日本に
来ている、技能実習生などの若さとエネルギー溢
れる人材は、いまや、日本人の生活や経済にとっ
て必要不可欠な存在となっています。」、こうお
っしゃっているんですね。
これは実は大変な発言でありまして、というの
は、技能実習制度というのは、あくまで国際貢献
のための制度、外国の若者が日本で技能を習得し、
帰国してそれを生かしていただく、そのための制
度です。ところが、菅総理は、技能実習生などが
日本人の生活や経済にとって必要不可欠な存在と
言っているんですね。
私は、総理の認識は間違っていると言いたいん
じゃないんです。むしろ、そういう認識なら、そ
れに見合った対応をすべきだと思います。ところ
が、技能実習生たちはどんな扱いを受けているか。
配付資料の二を御覧いただきたいと思います。
これは信濃毎日新聞の「五色のメビウス」という
連載で、これは非常に綿密な調査に基づいて、四
十回以上、連載で、県内のリアルな実態を報じて
おります。
ごく一部ですけれども、初めのものは一月六日、
見出しを見て、一番右側の黒いところにある「説
明と異なる力仕事の日々」。初めは、一番上の段
ですけれども、工場を経営する石川県の建設会社
からは、一年前は、機械を使って鉄筋を折り曲げ
る仕事との説明を受けていた。しかし、六月にな
るとがらりと変わったと。要するに、折り曲げる
んじゃなくて運ぶことに変わっていくんですね。
しかも、まともな賃金を払えない。だから、借金
も返せないから失踪した、こういう記事なんです。
次の記事は、その借金を何に使われているか。
実習生の借金を原資に、日本側企業への接待とか
キックバックが行われているということが指摘さ
れている。例えば、「日本側への接待やキックバ
ックにかかった費用は結局、実習生が多額の借金
として背負うことになる。ズンさんの送り出し機
関が実習生候補者一人から集める手数料は総額七
十万円。このうち十万円が接待やキックバックの
原資だ。」、こういう指摘なんですね。
そして、こうした事態が横行する原因の一つ、
これは受入れ企業と監理団体に関する構造的な問
題です。
入管庁にお聞きします。
全国には約三千の監理団体がありますが、この
配付資料にありますように、長野県の場合、実習
先企業の役員と監理団体の役員が兼務していると
いうのは五七%に達しているんです。
入管庁にお聞きしますが、全国の実態は把握し
ていますか。把握していないなら、調査すべきじ
ゃないですか。
〔伊藤(忠)委員長代理退席、委員長着
席〕
○松本政府参考人 お答えいたします。
現行の技能実習法令上、監理団体役員と実習実
施者役員の兼務は禁止されておらず、当庁におき
ましては、兼務に関する統計は把握しておりませ
ん。
○藤野委員 ですから、この配付資料にあるよう
に、長野県で見れば、本来監督すべき監理団体あ
るいは相談に乗るべき監理団体が受入先企業の役
員を兼務しているのが六割に達しているんですよ。
相談できない、監督もできないわけです。まさに
そうした実態が放置されている下で何が起きてい
るか、次の配付資料三を見ていただきたいと思い
ます。
これは在ベトナム日本大使館が作成した資料で、
そこの見出しにありますように、「送出機関によ
る手数料等の過大徴収が技能実習生の失踪の原因
ともなり得る」、そして、黄色く塗っているとこ
ろですけれども、「高額の訪日費用負担が、ベト
ナム人技能実習生の失踪リスクを高めている可能
性がある」、こういう指摘なんです。
大臣にお聞きします。
失踪すれば在留資格は失われるわけですね。そ
うすれば収容される、送還される。しかし、この、
在ベトナム日本大使館ですよ、これは。その大使
館が指摘しているように、失踪の大きな原因とし
て、過大な借金、訪日費用負担、しかも、その一
部は日本側へのキックバック、接待に使われてい
るんです。まさに外国人労働者、技能実習生が食
い物にされている構造がある。この構造こそ、や
はり失踪とか、ひいては在留資格を失う大きな要
因なんです。この構造にこそメスを入れる必要が
ある。
ところが、ここにはメスを入れていないわけで
すね。政府は、移民政策は取らないという建前を
取りながら、実際には安価な労働力として外国人
を受け入れてきた。つまり、入口における受入れ
は拡大しているんです。入口はどんどん拡大しな
がら、いざ何らかの事情で在留資格を失ったら、
もう活用できないとなれば、さっさと帰国しても
らおう、出口に当たる退去強制手続で入管に更な
る裁量と権限を与える、これがこの法案の本質な
んじゃないですか、大臣。
○上川国務大臣 今委員御指摘いただきました、
我が国への技能実習生の送り出しに関して、多額
の費用を負担したまま来日するケース、これが一
部に存在するものと承知をしております。
手数料の許容範囲でございますが、送り出し国
の法令に基づくものではございますが、不当に高
額な手数料を徴収するなどの不適正な行為を行う
送り出し機関等につきましては、我が国といたし
ましても、確実に制度から排除すること、これが
必要と考えているところでございます。
このことにつきまして、問題の本質をしっかり
と踏まえた上で、外国人の技能実習機構におきま
しては、この技能実習計画の審査におきましては、
不当に高額な手数料等の徴収がないかということ
についても確認をしておりまして、またさらに、
現在、ベトナムも含めまして、十四か国との間で
二国間の取決めを実施しているところでございま
す。不適正な事例を把握した場合には、相手国へ
の通報、さらに当該政府からの調査、指導、送り
出し機関の認定取消し等の対応を求めておりまし
て、既に八十機関、これを通報しているところで
ございます。
何といっても、この制度、やはり大事なことは、
技能実習の方々がしっかりと技能を身につけて母
国で活躍をしていただくということでございます
ので、失踪率、この高い送り出し機関、こちらの
社会から排除していく、制度から排除していく、
このために、PDCAサイクルをしっかりと回し
ながら、不断に検証を重ねながら、適正化を図っ
てまいりたいというふうに考えております。
○藤野委員 もう終わりますけれども、菅総理が、
技能実習生が日本人の生活と経済に必要不可欠と
まで言っているんです。必要不可欠だから、どん
どん来てくれ、どんどん来てくれと言いながら、
一旦資格を失えば、もうさっさと帰国してもらう、
この入管法というのは、日本はこういう国ですよ
というのを国際的に公言するようなものなんです。
断固廃案にすべきだ、このことを主張して、質問
を終わります。