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難民認定及び支援に関する要望書

 

20091013

 

全国難民弁護団連絡会議

特定非営利活動法人 難民支援協会

 

日頃から、難民保護のために尽力いただいていることを深く感謝申し上げます。

 

さて、1982年から日本において難民認定制度が開始され、すでに25年以上が経過しました。出身国における政治・宗教・民族などの違いから迫害を逃れた難民を保護し生命の安全を保障することは、人の生命に関わるものであり極めて重要な制度です。

 

より一層グローバル化、複雑化する社会の中で、残念ながら難民が減っていく展望はまだ見いだせず、日本を頼りに保護を求める難民はこの数年で急増しており、難民保護に関わる制度はますますその重要性が増していくと考えております。

 

しかし、日本の難民保護についてはまだ改善すべき課題があるのが現状です。例えば、国際社会からは独立した機関での審査の必要性、難民申請の結果を待つ間のセーフティーネットの不存在などを改善するように指摘されています[1]。諸外国に比べて認定率も低く、また国籍の偏りも指摘されています。

 

また、外国から逃れ、日本の地域社会で生きていく上で共生の視点から総合的な制度設計が望まれると考えます。日本が真に人道大国となり、迫害を逃れた難民が確実に保護を受けられるためには、抜本的な改革が不可欠です。

 

そのために、ぜひ以下の事項を実現していただきたく、要望をいたします。

 


【1】難民認定制度の課題についての改正要望

 

1.難民認定手続きに関して、適正な手続きを確保すること。

認定に関する審査及び手続きの基準が不明確であるため、行政手続法(第3条1項10号)の適用除外を改めるか、もしくは行政手続き法で定める基準を確保すること。具体的には、審査基準の設置及び公開(第5条)、標準処理期間の設置及び公開(第6条)、弁明の機会の付与(第29条)を含む。

 

2.難民認定の審査を法務省入国管理局より独立させること。

主権国家の厳正な規律が前面に出てくる入国管理行政の一部としてではなく、専門性を有する独立した機関が難民認定審査を行うべきである。少なくとも、現在異議申立て手続きについて、一次審査を行う入国管理局が行っている現状を改め、同局から独立した機関が審査するよう制度改正を行うべきである。

 

3.審査にかかる期間(裁判中も含む)の法的地位を保障すること。

 難民認定申請後、最終的な結論が出されるまでの法的地位を保障し、原則として在留資格がないことを理由とする逮捕・収容が避けられる体制とすること。また同地位は最低限の生活保障、もしくは就労を可能にするものであること。

 

【2】難民等の生活上の課題についての改正要望

 

4.難民認定申請中(裁判中も含む)の生活に関する制度的な保障を行うこと。具体的には、国民健康保険への加入、生活保護に準じた最低限の生活保障、一定期間経過後の就労許可を認めること。

 現在、難民認定申請中は国民健康保険への加入、生活保護の準用がなされていない。就労も半数近くが禁止されており、頼れるのは外務省が実施する保護費のみだが、近年の難民申請者急増に伴い予算が足りず、一時は100人以上が支援金を打ちきられるなど不安定な支援策となっている。最低限のセーフティネットの構築に関して、きちんとした法整備が必須である。また、審査にかかる期間が長期化している現状に鑑み、経済的な自立が可能な申請者については就労資格を付与することを検討いただきたい。

 

5.難民としての認定等を受けた後の定住支援に関する制度的な保障を行うこと。

 

6.第三国定住について受け入れられる難民は、難民条約上の難民と同等の法的地位を与えること。入国当初の導入研修後の定住支援に関しても、条約難民に準ずる扱いをすること。

 報道等によると、平成22年度よりパイロットとしてスタートする第三国定住においては、日本へ入国する難民についてインドシナ難民に準ずる扱いとするとされている。インドシナ難民は条約難民としての受け入れではなかったため、同等の保護が受けられず、難民旅行証明書の取得、日本で出生した子どもの国籍取得等について未だに課題を残している。このような課題を解決する形での新しい難民受入れが求められる。

 

【3】難民を支援する体制の改正要望

 

7.難民についての情報収集及び分析を行う資料センターを設置すること

 

8.難民及び難民認定申請者の法律・生活援助等を行うにあたっては、広く民間等の活力を利用すべきである

事業計画策定段階から政府内だけでなく、国際組織や、広く民間の研究者、法律家等の専門家、最前線で支援活動を行う民間の支援団体、また難民等の意見を取り入れ、事業実施にあたっても、民間の支援団体を含む効率的な事業運営を行える機関をその任につかせるべきである

 

【4】難民認定制度運用上の改正要望

 

9.難民申請者の収容急増、とりわけ従来行わなかった難民認定手続き中の収容を直ちに止めること

 支援団体が把握している限り、20097月以降難民申請者の収容が急増している。とりわけ、数年来把握されていなかった一次不認定結果直後の収容が増えており、異議申立て手続きを実施するにも代理人、支援者との相談もできず、自身で資料を集めることも難しい現状にある。手続はすべての申請者に同じように運用されるべきであるのに、入管の裁量によって区々となってしまうのが現状の制度の課題である。

 自ら超過滞在であることを告げて出頭した難民申請者の仮放免にも1年程度の時間を要することがあり、その間に非常に不安定な法的地位に置かれてしまう。

 

10.仮滞在の結果をできるだけ早く出し、本来の趣旨にあった運用を行うこと

 2004年の法改正の際に新設された「仮滞在」制度が事実上機能していない。2008年には許可率が9%を切り、形式上の審査で結論が出せるはずの結果に数ヶ月かかるケースが多い。この仮滞在制度が機能しないことも要因となって、9で指摘した収容問題が継続しているおり、難民申請者の地位が入管の恣意的な運用によって左右されている現行制度の見直しが急務である。

 

以上

 

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[1] 例えば、自由権規約委員会は日本政府報告書へ対して総括所見の中で以下のように勧告しています。「25.締約国は、拷問その他の虐待の危険がある国への難民申請者の送還を明文で禁止するため、出入国管理及び難民認定法を改正することを検討し、また全ての難民申請者に対し、弁護士、法律扶助、通訳のほか、手続の全期間にわたる適切な国庫による社会扶助あるいは雇用へのアクセスを確保すべきである。締約国はまた、法務大臣によって「テロリスト容疑者」とみなされた難民申請者も利用しうる完全に独立した不服申立機関を設置すべきであり、そして行政手続の終了後難民申請者がその難民不認定の決定に対する不服申立てをなしうる前に直ちに強制送還されないことを確保すべきである。」(CCPR/C/JPN/CO/5 30 October 2008