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抗 議 声 明

 

 東京入国管理局は、2月21日、クルド人D氏に対して退去強制令書を発付して、強制送還の準備として同氏を同局収容場に収容した。

 同氏は、2004年7月法務省入国管理局が行った「トルコ出張調査」(以下「法務省トルコ出張調査」)の被害者のひとりである。法務省トルコ出張調査の対象とされた者で、同調査後に改めて退去強制令書が発付され、収容された件は、このケースが最初である。

 当弁護団は、かねてより、法務省トルコ出張調査の被害者に対する在留許可の付与を要求してきた。にもかかわらず、今回、法務省がこれを拒絶する姿勢を示したことに、憤っている。

 あらためて、次のことを表明する。

 1 今回の、在留許可の拒否と退去強制令書発付・収容に抗議する。

 2 D氏の即刻の解放と、D氏を含む、法務省トルコ出張調査の被害者への在留許可の付与を要求する。

 

 2004年7月、法務省入国管理局職員は、トルコ国籍クルド人難民申請者の個別情報をトルコ共和国治安機関に漏洩し、同治安機関と協力して調査を行うとともに、同警察官ないし軍人とともにクルド人難民申請者の家族らを訪れるなどした。この暴挙について、当弁護団は、2004年8月4日付けにて抗議声明を発表し、法務大臣他関係官署に送付したところである。

 D氏は、上記の法務省トルコ出張調査の調査対象とされたクルド人難民申請者のうちの1人である。

 上記調査行動が、難民条約の精神に反することはもとより、自由権規約第7条及び拷問等禁止条約第4条により、出身国が拷問、残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取り扱いをすることに荷担してはならないのにも関わらず、出身国当局に対して個人情報を漏洩するとともに難民申請者の親族にまで出身国当局者の注意を向けさせたという点で、許されない不祥事であることは、すでに先の抗議声明で指摘したおりである。

 また、国連難民高等弁務官(UNHCR)日本・韓国地域事務所も、難民申請者の秘密は出身国に伝えてはならないとの立場を取り、法務省トルコ出張調査に関して、「難民認定手続の秘密保持などに関する国際的な基準に反する」と2004年8月に言及してこれを批判したところである。

 実際に、法務省トルコ出張調査を契機として、度重なる尋問を受けたクルド人、治安当局への出頭を求められたクルド人がおり、その結果国外に脱出して来日し、難民申請をした者もいる。法務省入国管理局は、難民認定を担当するに不適任であるだけでなく、難民の関係者に積極的に危害を及ぼすことに荷担してしまったのである。

 このようにして迫害のおそれを増大させた被害者に対し、法務省入国管理局は、その責任で保護をするべきである。当弁護団は既にその旨、2004年8月9日付け日弁連人権救済申立事件において申立をしている。D氏は、同事件の申立人の1人である。

 まだD氏は、現地調査に先立ってすでに難民の認定をしない処分について提訴をし、同訴訟の一審は未だ係属中であり、現地調査を行った入管職員に対する証人尋問も日程に上っているところであり、強制送還をすることは裁判を受ける権利をも害する。

 しかるに、保護をするどころか、D氏に対して退去強制令書を発付して強制送還の準備として同氏を収容したことは、許すことが出来ない行為である。

 当弁護団は、7月の現地調査について再度法務省に強く抗議をし、再発防止のため、今後難民申請者の秘密を守り、難民認定に携わる公務員はトルコ共和国当局と協力関係に身を置くことがないよう要求することに加えて、D氏を解放し、同氏を含む被害者に対する責任を認め、即刻在留を許可するよう要求する。

2005年2月22日

クルド難民弁護団 団長 弁護士 伊藤 和夫

 

(連絡先事務局 03-5951-6077弁護士大橋 毅)

 

D氏のプロフィル

 

1955年3月生まれ

2000年12月来日

2001年2月難民申請

2002年6月不認定処分

2002年6月日異議申立

2002年12月異議却下

2003年1月却下告知

2003年4月難民の認定をしない処分取消訴訟(15年(行ウ)241号)提訴

 

現在一審係属中

 

2005年2月収容

 

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