ホーム/ニュース > 声明/提言 > 200527日・声明

 

抗 議 声 明

 

 

 入国者収容所東日本入国管理センター(茨城県牛久市)は、2004年2月4日、収容中であったトルコ国籍クルド人男性Y氏につき、成田国際空港から本国トルコに向けての強制送還を強行しようとした。幸いにも、情報を得た国会議員やNGO等の抗議や直ちに行われた退去強制令書執行停止申立などにより、送還は航空機の出発寸前に中止され、Y氏は同日夕方までに東日本入国管理センターに戻されて再収容された。

 当連絡会議は、1月18日に突然行われたトルコ国籍クルド人男性2名(国連難民高等弁務官事務所のマンデート難民として認定済み。)の抜き打ち的な強制送還についても抗議声明を出したところであるが、それから3週間も経ないうちに再びこのような送還が強行されようとしたことは、誠に遺憾である。

 今回送還されようとしたY氏は、マンデート難民としての認定こそ受けていないものの、以下の事情が認められる。

 (1)昨年7月に法務省入国管理局職員がトルコに赴き、こともあろうか日本におけるトルコ国籍難民申請者の個人情報をトルコ政府当局に漏洩して調査を行うという暴挙に出たことは記憶に新しいが、同調査の際にはY氏も調査対象とされていて、その後最近までY氏の実家はトルコ憲兵隊の捜索を受けるなど、現実にも同調査によって迫害の危険性が新たに発生していると認められる事案であったこと

 (2)昨年12月10日に東日本入国管理センター内で被収容者がハンガーストライキを実施していたのに対して入国警備官数十名がこれを「制圧」するとの名目で暴力行為を行い、多数の被収容者が負傷した事件に関しては、12月20日付で水戸地方検察庁に当連絡会議メンバーの弁護士ら31名が告発を行い、同告発が受理されて目下捜査中であったところ、Y氏はこの「制圧」事件の被害者(負傷者)であって、Y氏の送還は被疑者である同入国管理センター入国警備官自らが刑事事件の重要証人の証人尋問等を不可能ならしめるという側面も有すること

 (3)Y氏は従前から体調が非常に悪い状態が続いており、収容に耐えない状況にあったのであるから、航空機への搭乗についても健康上の懸念が存在すること

 以上の事情のもとにあっては、Y氏の送還の執行については格段に慎重な検討を要すべきところ、東日本入国管理センターは拙速にこれを強行しようとしたものである。上記(1)の事情からすれば、少なくとも現段階でY氏をトルコに送還することは迫害・拷問の危険がある地域への送還を禁じる難民条約33条及び拷問等禁止条約3条に違反する可能性が高く、また、上記(2)の事情からすれば、今回の送還(未遂)行為は、捜査中の刑事事件の被疑者自身による証拠隠滅行為と評価されるべき行為である。

 当連絡会議は、以上の観点から今回の送還(未遂)行為に対して厳重に抗議するとともに、法務省・入国管理局当局に対して、以下の事項を求める。

 

1 退去強制令書(送還)の執行に当たっては、執行時点での当該案件の具体的事情(執行時点での迫害の危険性の有無、裁判を受ける権利をはじめとする各種権利の保障、健康状態等)に鑑みて慎重な検討を行い、拙速な執行を行わないこと

2 係属中の刑事事件や民事事件が存在する場合に、証拠隠滅行為と疑われるような送還の執行を行わないこと

3 送還の執行の具体的目途のない案件に関しては、特別放免や仮放免を活用するなどして長期の収容を避けること

 

2005年2月

全国難民弁護団連絡会議 代表 弁護士 伊藤和夫

(事務局連絡先 03-3832-4521 弁護士 渡邉彰悟)

 

Copyright 2010 JLNR 全国難民弁護団連絡会議 All Rights Reserved