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申  入  書

 

法務大臣 南野智恵子 殿

入国管理局長 三浦正晴 殿

 

1 趣旨

    国連難民高等弁務官事務所日本・韓国地域事務所が、難民の地位に関する条約及び難民の地位に関する議定書に定義する難民(以下「条約難民」という)ないし同事務所が関心の対象とする者であって本国に送還するべきでないと判断したものについて、すでに退去強制令書が発付されたものであっても今後本国に強制送還をせず、在留特別許可を積極的に行うべきこと

今後、難民認定手続の運用など出入国管理及び難民認定法の運用においては、国連難民高等弁務官事務所の示す解釈、勧告、判断などを尊重するべきこと

以上申し入れる。

 

2 理由

 2005年1月18日、条約難民として,国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)から認定を受けていた者(以下「マンデート難民」という。)であったトルコ国籍クルド人Kの強制送還に対して退去強制令書の執行が行われた。マンデート難民に対する同執行は、前例がない。

 K以外にも、マンデート難民でありながら法務省・入国管理局から保護を拒まれ続けている人々が、日本国内に20人以上いる。彼らはほとんど社会保障を受けることもできず、行動の自由を制約されており、収容所に収容されている人もいる。さらに、条約難民以外にも、送還された場合に重大な人権侵害が発生する恐れがあるとしてUNHCRが関心の対象とし、送還をするべきでないと判断している人々もいる。今回の措置は、彼らにさらなる恐怖と不安を与えたことは疑いがない。

 

 難民条約締約国における条約の適用を監督する機関として,また難民保護についてもっとも権威ある国際機関として,UNHCRの判断は尊重されるべきである。また,難民条約35条によって日本はUNHCRへの協力を約束している。

 UNHCRが難民と認める者の強制送還は、難民条約33条の送還禁止原則に違反する恐れが高く、絶対に避けられるべきものである。また、同機関の決定を無視した措置は,難民条約35条に基づくUNHCRへの協力の約束にも、国会の意思にも反することにもなる。

 また,昨年入管法改正の国会審議の際に,参議院法務委員会において,自由民主党,民主党・新緑風会,公明党及び日本共産党の各派共同提案による「出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案に対する附帯決議」の中で,「政府は,本法の施行に当たり,次の事項について特段の配慮をすべきである」として,「出入国管理及び難民認定法に定める諸手続に携わる際の運用や解釈に当たっては,難民関連の諸条約に関する国連難民高等弁務官事務所の解釈や勧告等を十分尊重すること」とあり、立法意思においても、UNHCRの判断の尊重を求めている。

 法務省、入国管理局は、難民条約締約国の政府機関として、また立法府から授権された権限を行使する者の責務として、UNHCRの判断を尊重し、同機関が保護を求める人々については、自らが保護の措置を積極的に講じるべきである。

 また、難民の地位に関する条約前文がうたうように、国際的な広がりと国際的な性格を有する難民の問題を解決するには、国際協力なしに得ることができない。日本が、自国領域内にあって保護を要する者の保護の責任を他国に転嫁することは、国際協力と相容れず、なすべきことではない。

 当会議は、申し入れの趣旨記載の点を最低限必要不可欠の措置と考え、これを貴庁らがなされるよう、申し入れる。

2005年2月

全国難民弁護団連絡会議 代  表 弁護士 伊藤和夫

 

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