ホーム/ニュース > 声明/提言 > 2005119日・声明

 

総理大臣 小泉純一郎 殿

法務大臣 南野智恵子 殿

入国管理局長 三浦正晴 殿

 

声  明(抗議及び申入)

 

全国難民弁護団連絡会議は,トルコ国籍クルド人の父Kと息子Rが法務省・入国管理局により強制的に送還された件について,以下のとおり厳重に抗議し申入れをする。

 

申入の趣旨

 

1 父子の送還後の結果に責任を持ち,二人の身の安全の確保に務めるとともに,日本に残された家族に対しては、収容、本国への強制送還を行わず、UNHCRに協力して、保護のための適切な措置を講じること。

2 今後、UNHCRの解釈、勧告、判断を十分尊重すること。特にマンデート難民については、二度と収容、本国への強制送還をしないことはもちろん、在留の許可等、日本の責任において、保護のための適切な措置を、積極的に講じること。

 

申入の理由

 

 Kは,トルコでの政治的迫害を逃れるため,日本に居住している難民条約上の難民として,国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)からも認定(マンデート難民)を受けていた。今回の送還は,マンデート難民に対するものとしては初めてのものである。難民の本国への送還が難民条約33条の送還禁止原則に反する暴挙であることはいうまでもない。

 また,難民条約締約国の条約履行を監督する機関として,また難民保護についてもっとも権威ある国際機関として,尊重されるべきUNHCRの決定を,完全に無視した異常な措置と言わざるを得ず,また,難民条約35条によって日本が約束したUNHCRへの協力の責務にも反するものである。

 さらに,昨年入管法改正の国会審議の際に,参議院法務委員会において,自由民主党,民主党・新緑風会,公明党及び日本共産党の各派共同提案による「出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案に対する附帯決議」が議決されたところ,「政府は,本法の施行に当たり,次の事項について特段の配慮をすべきである」として,「出入国管理及び難民認定法に定める諸手続に携わる際の運用や解釈に当たっては,難民関連の諸条約に関する国連難民高等弁務官事務所の解釈や勧告等を十分尊重すること」とある。今回の措置は,この立法府の意思にも反するものである。

 

 法務省・入国管理局は,2004年のクルド人の難民申請者に対する本国トルコ調査によって,日本におけるクルド人難民申請者に対する迫害の危険を増幅させた。その際にもUNHCRを含む多くの団体から批判を受けたのに,そのことへの反省もないままに,今回の措置を行ったものである。

また、K以外にも、マンデート難民でありながら法務省・入国管理局から保護を拒まれ続けている人々が、日本国内に30人以上いる。彼らはほとんど社会保障を受けることもできず、行動の自由を制約されており、現時点で収容所に収容されている人もいる。今回の措置は、彼らにさらなる恐怖と不安を与えたことは疑いがない。

この送還と送還の結果に対して日本政府,法務省・入国管理局が負う責任は極めて重大である。

 

法務省・入国管理局は2004年の難民に関する法改正によって,日本の難民保護に関する前向きのメッセージを送るという国会において答弁しておきながら,上記調査やこの間の難民申請者の摘発・収容や今回の送還からは難民保護への後ろ向きの姿勢しか見えてこない。入国管理局が難民認定機関としての役割を果たしえないことが露呈したと言わざるを得ない。

 

 全国難民弁護団連絡会議は,条約違反の行為である本送還に厳重に抗議するとともに,頭書きの点について日本政府,法務省・入国管理局に対し,申し入れるものである。

以上

 

全国難民弁護団連絡会議

代 表 伊 藤 和 夫

 

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