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法務大臣  野沢太三 殿

警視庁 御中

東京地方検察庁 御中

法務省入国管理局  御中

東京入国管理局  御中

 

難民申請者の摘発に対する抗議声明

 

当会議は、難民申請者が不法入国・不法滞在(以下「不法入国等」という)により摘発を受けている近時の状況に鑑み、関係各機関に対し、次のとおり抗議及び申入れを行う。

1. 警視庁を初めとする各都道府県警察は、不法入国等の被疑事実により難民認定申請中の者を逮捕すべきではない。仮に不法入国等の被疑事実により逮捕した者(或いは任意同行を求めた者)が難民認定申請中であることが判明した場合は、速やかにその者を釈放すべきである。

2. 東京地方検察庁を初めとする各地方検察庁は、不法入国等の被疑事実により難民認定申請中の者に対する勾留請求・起訴をすべきではない。仮に不法入国等の被疑事実で送検された者が難民認定申請中であることが判明した場合は、速やかにその者を釈放すべきである。

3. 法務省入国管理局・各地方入国管理局は、不法入国等を理由として、難民認定申請中の者を収容すべきではない。仮に不法入国等の容疑で摘発を受けた者が難民認定申請中であることが判明した場合は、速やかにその者を釈放すべきである。また、難民認定申請の準備中に摘発を受けて収容され、その後に難民認定申請をした者については、速やかに仮放免をすべきである。

 

上記の抗議及び申入れを行う理由は次のとおりである。

2003(平成15)年1017日、法務省入国管理局・東京入国管理局・東京都・警視庁は、「首都東京における不法滞在外国人対策の強化に関する共同宣言」を発表し、東京入国管理局と警視庁との連携による合同摘発の恒常化、警視庁警察官による不法滞在者に対する職務質問の強化等を推進することを宣言した。さらに、法務省入国管理局は、2004(平成16)年216日、不法滞在者等に対する摘発を一層強化するため、ホームページ上で「不法滞在者等の外国人情報」の受付を開始するに至っている。

しかし、このような不法滞在者等の摘発の強化は、本国における迫害を逃れて難民として日本に保護を求めている者又は保護を求めるべく準備をしている者の地位を著しく不安定かつ脆弱なものとしている。

実際に、当会議に属する弁護士からは、近時、難民認定申請中で申請時に不法入国等の事実を東京入管に申告していたにもかかわらず、不法入国等により逮捕・勾留を受けている者、難民不認定処分に対する異議を申し出ていたにもかかわらず、不法入国等により逮捕・勾留を受け、その後、起訴された者、難民認定申請中又はその準備中に東京入管による摘発を受けて収容された者などの例が報告されているところである。

その者が難民申請者であるかどうかを考慮することなく、不法滞在者等として摘発することは、日本が難民の地位に関する条約(以下「難民条約」という)を批准した意義すら喪失させるものと言わざるを得ない。このような報告に対し当会議は怒りを禁じ得ないし,また法務省をはじめとする関係各機関に厳重に抗議するものである。

 

難民条約は難民が迫害を逃れるために不法入国等をせざるを得ない場合が多いことに鑑み、31条において、避難国に不法にいる難民に対し、不法入国等を理由として刑罰を科してはならず、また、難民の移動に対し必要な制限以外の制限を課してはならないと定めている。そして、この理は難民の可能性がある申請中の者にも及ぶものであり、同条の解釈に関する国際連合難民高等弁務官事務所(UNHCR)執行委員会結論第44「難民申請者の拘禁」及び1997(平成9)年7月付け「庇護希望者の拘禁に関してのUNHCRガイドライン」は、難民申請者に対しては、仮に不法入国等であっても、原則として拘禁を行うべきではないとしている。

よって、難民認定申請中の者について、不法入国等の容疑で逮捕・勾留したり、退去強制手続に基づき収容したりすることは、日本が批准した上記条約に反するものであり、難民認定制度の趣旨を没却するものである。この点、法務省も、難民申請者に対する収容が人権上問題であるとの批判を踏まえ、出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案において、不法滞在等である難民認定申請中の者の法的地位の安定化を図るための制度の設置を求めているのであって、近時の難民申請者に対する摘発は、この流れに逆行するものと言わざるを得ない。

冒頭の要望を厳粛に受け止められ,現在逮捕拘束している者について早急に身柄を解放するとともに,今後このような事態が生じないように申し入れるものである。

 

2004(平成16)年319

全国難民弁護団連絡会議

代表世話人 弁護士 伊 藤 和 夫

世話人 弁護士 渡 辺 彰 悟

 

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