2003年10月24日
法務大臣矢沢太三 殿
東京入国管理局長 殿
東日本入国管理センター所長 殿
訴訟準備中の難民認定申請者の強制送還に対する抗議声明
2003(平成15)年10月17日、パキスタン人難民申請者(女性)が東日本入国管理センターよりパキスタンへ強制送還された。女性は2003年7月2日になされた難民不認定処分に対する異議申出をなし、同時に同異議申出が却下された場合に備え、弁護士と共に訴訟の準備を進めていた。このことは、支援者や弁護士、仮放免申請書類等を通じて入国管理局にも明らかとなっていた。にもかかわらず、入国管理局は、支援者や弁護士に全く知らせることなく、10月17日、女性の異議を却下するとともに、同日のうちに送還までしてしまったのである。
かかる措置は、人道上許されるものではなく、かつ、法的観点からも極めて重大な瑕疵を帯びるものであり、まさに暴挙というに値する。
今回のこの強制送還が、ノン・ルフールマン原則違背(難民条約33条1項,憲法98条2項)、裁判を受ける権利の侵害(憲法32条)に該当することは明らかである。
また、本件送還は異議申出に理由なしとの決定と同日になされており、異議手続を無視して従前から周到に準備してなされた措置であることは明白であって、送還に対する女性の同意すら取っていないことからしても、適正手続にも反するものである(憲法31条)。
これまでのところビルマ人の難民申請者について本件のような取扱いはなかった。ビルマの政治情勢に鑑みれば、ビルマ人についてかかる強制送還がなされることがあってはならないことはもちろんであるが、今回のような送還が、恣意的かつ不平等に行われたものであるとすれば、それ自体として不平等な扱いと言わざるを得ず、そのような扱いそのものが平等原則ないし比例原則(憲法13条及び14条等)さらには手続上の適正(同31条)を侵しているものである。
さらに、近時司法の場において入管の難民認定判断の誤りが少なからず指摘されている。難民認定行政における謙抑的な姿勢を求めたい。自らの判断の正当性を堂々と司法の場で述べるというのがあるべき姿勢である。
当弁護団は、貴殿らに対し、今回のような送還が行われたことに強く抗議するとともに、今後、訴訟準備中の難民申請者をビルマ人を含めてすべての難民申請者について送還しないことを誓約するとともに、その旨を公式に表明し、入国管理局内にも周知徹底することを強く求めるものである。
以上
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