法務省入国管理局御中
2003年3月24日
申 入 書
全国難民問題弁護団連絡会議
近時のインタビューにおいて、事実の調査を担当し、調査報告書及び事案概要書を作成する難民調査官とは異なる調査官が、インタビューによる事情聴取にあたっている例が散見される。
しかしながら、このような事態は、貴局作成の難民認定事務取扱要領も許容していないというほかなく、また、以下に指摘するとおり、正確な難民認定手続に致命的とも言うべき影響を与えるものである。
まず、事情聴取を自らが行わなければ、申請者の挙動・真摯さ・信用性の判断は不可能と言わざるを得ない。この点、UNHCRも、「供述調書や面接報告書だけでは、申請者の信憑性を的確に判断するのは極めて難しい」と指摘している(UNHCR「難民認定」研修マニュアル23頁)。
また、インタビューを行う難民調査官が事情聴取のみを担当し、他の事実の調査等は全て別の難民調査官が担当しているとすれば、およそ実効的な事情聴取は期待しえない。特に近時、事情聴取を行う難民調査官が、出身国情報や、難民条約、難民法についての知識をほとんど持ち合わせていないと判断せざるを得ない事例が多くあり、事情聴取の実効性に重大な疑念を生じさせている。この点についても、UNHCRの「事前の勉強は面接の不可欠な一部であ」り、「十分に情報を収集し準備を整えた面接者は、申請者に信用され信頼関係を結ぶことができる。」との指摘に十分留意する必要がある(UNHCR「難民申請者を面接する」2頁)。
そもそも、我が国の難民認定手続は、事実の調査を行う者(難民調査官)と決定を下す者(法務大臣)とが分離しており、難民認定制度の要の一つともいわれる直接主義が担保されていない点で大きな問題がある。この制度の下では、事情聴取にあたった難民調査官が事案概要書に意見を付すことが、唯一、直接性の趣旨をいくらかでも実現させうる方法であった。しかしながら、インタビューによる事情聴取を行う者と調査報告書・事案概要書を作成する者が分離されれば、当該難民認定手続において直接性は全く存しないこととなる。
当会議は、このような事実の調査を担当する難民調査官とは別の難民調査官が事情聴取にあたるという近時の運用に強く抗議するものである。早急にこの事態が改善されないようであれば、今後、当会議に属する弁護士が代理人を努める事案では、事情聴取を拒否することも検討せざるを得ない。
以上
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