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  2017年5月31日
衆議院外務委員会質疑
中川正春委員(民進)
 

○中川(正)委員 おはようございます。民進党の中川です。

質問の時間を与えていただいたこと、感謝を申し上げたいというふうに思います。

きょうは、難民の問題を中心に質問をしていきたいというふうに思います。

安倍政権になって積極的な平和外交ということがうたわれていますが、本来、人間の安全保障であるとか、あるいはソフトパワーという意味でも、日本の外交の特色というか、私たちの意思というのを海外に対して示してきたということがあると思います。

そういう意味で、難民の問題というのはコアというか中心になる課題だと思いますし、今、世界の情勢を見ていると、この難民をどういうふうに再定住させていくか、あるいはこれ以上ふやさない、そういう対応をしていくか、これは世界にとって非常に大きな課題であろうかというふうに思います。そうした意味で、足元の、私たちの国のあり方も含めて、きょうは一つ一つ確認をしていきたいというふうに思っています。

まず、今の世界の状況、国として、この難民の状況をどう認識しているか、どういう世界観の中で難民というのをつかんでいるかということを確認しておきたいと思います。

○森(美)政府参考人 お答えいたします。

委員お尋ねの難民をめぐる状況でございますけれども、現在、難民をめぐっては、国際的に非常に厳しい状況にございまして、201512月のこの時点で避難を余儀なくされている人は、世界で約六千五百三百万人に達しており、これは、第二次世界大戦後最多の数となっております。(中川(正)委員「6,530万人」と呼ぶ)6,530万人でございます。失礼いたしました。

○中川(正)委員 いや、人数だけということじゃなくて、こういう問題に対して、どのように日本が対応しているか、していこうとしているか、あるいはどういうふうにこれを把握していくか、日本の役割というのは何なのかということを、総合的にどのように考えているかということなんですが、これは大臣からでも結構です。

○岸田国務大臣 難民問題につきましては、G7を初め国際的な会議におきましても必ず主要テーマとして取り上げられる重要な課題であると認識をしています。そして、難民問題については、難民の受け入れ等が大変注目を集めますが、やはり難民の背景には、紛争ですとか格差ですとか貧困ですとか、大変社会的な大きな背景があるということをしっかり認識しておくことが重要であると思います。

よって、難民問題に対応するに当たって、難民の受け入れ、もちろんこれも大変重要な課題でありますが、そもそも難民が発生している、こういった背景に対して的確に国際社会が対応していく、こういった問題意識が大変重要なのではないかと思います。

その中で、我が国がどのような役割を果たしていくかということでありますが、我が国は、我が国の強み、こうした難民が発生する地域に対する人道支援ですとか、社会の安定に資するさまざまな取り組み、あるいはインフラ整備、人材育成、こういった部分にしっかり取り組んでいくのが我が国の果たすべき役割ではないか、それが我が国の強みを生かす難民対策ではないか、こういった認識で取り組んでいると承知をしております。

○中川(正)委員 そのとおりだと思うんですね。そこの部分というのは非常に大切なことでありまして、特に資金的に、ここにありますが、1.6億ドルUNHCRに拠出をして、これは第5位だということ。あるいは、邦人職員もかなりUNHCRでは多いんですね、国連機関の中では第四位だというふうな資料が私にも届けられています。

紛争国に対して社会基盤をどう整えていくか、これは一つですが、難民が逃げていく先、その受け入れをしている各国に対して、これをどう定着させ、あるいはまた、しばらくの間、この人たちの保護に対して日本も関与をしながら援助していくというような政策、これは一つ、日本のあり方としては正しいやり方だというふうに思います。

ただし、先ほど大臣から出ましたが、では、日本の国内として、この難民に対して、具体的にこれを受け入れる、あるいは受け入れてほしいというUNHCRを中心にした世界のコミュニティーの期待に対して、では何もしなくていいかというと、そうではないんだと思います。

現状は、以前話が出ましたが、シリアから150人、5年間で留学生を受け入れますよという枠組みぐらいで、今、対応策というのはある意味では皆無、ないというような状況が続いているんですが、私は決してそういうことではないというふうに思っています。

そういう意味合いで、ちょっともう少しこの問題点を深掘りしていきたいというふうに思うんです。

その中で、日本が具体的に国を開くということで、身近なところで難民問題を考える、あるいは身近なところで難民を受け入れるということで、どういう社会的な構造を変えていかなきゃいけないか、あるいは私たちの意識そのものも変えていかなきゃいけないかという、そんな観点で尋ねていきたいと思います。

まず、現実からですが、日本の難民の受け入れ体制と、あるいは受け入れの実態というのはどういうことになっていますか。

○佐々木政府参考人 御報告いたします。

平成28年の我が国における難民認定申請の状況につきましては、難民認定申請者が10,901人、そのうち過去に難民認定申請を行ったことがある申請者は1,497人となっております。

また、平成28年の我が国における受け入れ状況につきましては、難民認定手続により難民と認定した数が28人、難民認定手続では難民とは認定しなかったものの、人道上の配慮により在留を認めた数が97人となっておりまして、我が国において実質的に庇護を与えた外国人は125人となっております。

このほか、第三国定住により受け入れた人が18人となっております。

○中川(正)委員 難民認定が28人で、人道的配慮を入れても128人ですか、こういう数字なんですが、これはよく世界で、日本に難民問題に対して対応を期待するコミュニティーからは、余りにも閉鎖的じゃないか、日本の今の現状を見たときになぜこういう結果になるのかということがよく疑問視されます。尋ねられます。そこのところをどのように分析をしているか、答えてください。

○佐々木政府参考人 お答えします。

難民認定は、国際的な取り決めであります難民条約等に規定されている難民の定義にのっとり、申請者が難民に該当するか否かを判断するものでありまして、政策的に受け入れ数を増減させるというような性質の手続ではありません。

現状といたしまして、我が国におきまして、今、国際問題化しております欧州の状況とは異なり、シリア、アフガニスタン、イラクのような大量の難民認定申請者を生じさせる国の出身者からの難民認定申請は極めて少ない状況にございます。

これに対しまして、難民認定申請によって庇護を求めることが主眼ではなく、我が国での就労機会を得ることや、退去強制による送還を回避することが本来の目的と思われる申請も少なからず見受けられます。

私ども入国管理局といたしましては、引き続き、難民条約上の難民への該当性の判断、また人道配慮による在留の判断を適正に行い、真に庇護を求める方の迅速かつ確実な保護を図ってまいりたいと考えています。

○中川(正)委員 入管で説明させるとこのような説明になるんです。

ところが、難民の受け入れというのは二つの類型があるんですね。一つは、先ほどのような、自然体で、日本に難民申請を出す人たちに対して審査をしていくという形。もう一つは、先ほどちょっと話が出ました第三国定住のように、こちらから現地に行って、受け入れ枠というのを決めて、その中で日本に再定住の枠をつくっていく、いわゆる積極的難民受け入れ政策といいますか、これは外務省が実は窓口を担当しているんですよね。この二つの類型があります。

だから、意思を持って日本で受け入れようということであれば、意思を持ってということは国の政策としてこれを受け入れようということであれば、ミャンマーの少数民族でその枠組みをつくったように、第三国定住という形で日本への再定住を進めることができるということ、このことについて、外務省はひとつ、入管のいわゆる申し開きだけを世界に対しての申し開きだということでおさめないで、やはり意思を持って、この問題について日本が国を開く政策というのをつくっていくべきだというふうに私は思っています。

その上で、実は、こうした枠でつくったものというのは第三国定住だけじゃなくて、インドシナ難民のときも、特別法をつくって1万人からの難民というのを受け入れました。あのときの意思というのは、日本がそうした枠組みをつくったということなんですが。

私は、今、その第三国定住の状況を見ていて、このままその枠をつくっても、なかなかそれが消化し切れないというか、どうもいわゆる仕組み自体に限界があるというふうに思っているんです。その上で、この第三国定住は拡大をすべきだと私は思っているんです。

これは、今の内閣の枠組みでいけば、ミャンマーの少数民族を対象にした第三国定住なんです。これを、例えばシリアで、今、学生という形で入ってきています、これは難民の受け入れじゃなくて留学生の枠の拡大なんですよね、そういう形でなくて、第三国定住のような枠組みでやろうと思ったら、一つは、国というものをミャンマーに限らずに、限定せずに、他の国に対してもこの第三国定住が適用できるというような拡大をやろうと思ったらできるということ、これに対して、そういう意思はないかどうか、これをまず確認をしたいということ。

それからもう一つは、これは、今、RHQ、これはインドシナ難民を受け入れたときにつくった、いわば外務省の天下り法人みたいな形になっているんですが、ここが全て委託をされて、そこの事業としてやっているんですね。

私も具体的にこの事業に携わった経験からいうと、本来は、地方公共団体、地方自治体が具体的に直接関与していくことによって、難民問題に対する意識、それから、海外のいわゆる情勢に対する意識というのは国民の間にも非常に大きな広がりを持っていくということ。こんなことも考えていくと、必ずしもRHQに丸投げをしてそれを運営するということをしなくとも、あるいは、それをすることによって、そこが邪魔になって地域へ向いての広がりが限られたものになっているという、いわゆる逆の効果になっているような気がするんです。

そういう思いを持ってこれを見ているんですけれども、具体的にそうした改革も含めて、この第三国定住の枠を広げていく意思はないかどうかということを大臣に改めて質問をしていきたいと思います。

こっちから、内閣府からいくか。これはどこの担当になるんですか。外務省……(岸田国務大臣「外務省です」と呼ぶ)外務省ですよね。

○飯島政府参考人 お答えいたします。

シリアの件でございますけれども、第三国定住での受け入れ対象をシリア難民などにも拡大すべきとの点につきましては、まず、委員御指摘になられたとおり、シリア人留学生の受け入れ、これを着実に実施していくことが重要と考えております。

これを拡大していくか否かにつきましては、国際情勢やそれから人道的な視点等も考えて、あるいは我が国の社会への影響も考慮しながら、国内関係省庁間でしっかりと議論していきたいと考えております。(中川(正)委員「やはり大臣ですね」と呼ぶ)

○岸田国務大臣 もう一点、地方とのかかわりについて御質問をいただきました。

やはり、こうした制度に対する、広く国民の理解を得、そして協力を得るという意味から、幅広く地方の関与ということは重要なのではないかとは、今委員のお話を聞いておりまして感じました。

ただ、済みません、私自身、今、現状について、地方との関係について、今手元で承知しておりませんので、ちょっと確認した上で、具体的にどうあるべきなのか、改めて考えたいと思います。

○中川(正)委員 ぜひ確認をしていただきたいというふうに思います。

これはUNHCRからもそういう指摘があるし、私自身もこの事業に携わってつくづくそう思いました。外そうと思っていたんですよ、RHQを。

まず、海外から入ってきた難民に対して日本語の研修だとかあるいはオリエンテーションをRHQがやるんですけれども、このことを東京のど真ん中でやって、その印象を海外から入ってきた難民の人たちが持って、それでそれぞれ就職先を見つけてもらって行く。それはRHQがやっているんだけれども。

本来は、じかに地方自治体が最初から研修もやって、その地域で定着するという前提でそれぞれ職業を選択していくという形が一番望ましいし、とれるんだけれども、RHQはなかなかこれを手放さない。なぜかというと、予算の関係があるんだと思うんです。これを外して、それぞれのところへ向いて、RHQを通さないで、直でそれぞれの自治体に資金を渡せば、自治体はそれをもって組み立てることができるということ、これは私の実感としてあるので、そういう目で見て、今のRHQというのはどういう状況にあるのかということを一つ確認していただきたいというふうに思います。これが一つです。

それから、もう一つ確認したい。第三国定住の国の対象ですけれども、今、ミャンマーだけになっています。これを他の国々に、いわゆる汎用的にというか、一つの国ということじゃなくて、どの国でもそうしたニーズを把握しながらコミットをしていくというような、そういう枠組みに変える意思はありませんか。ぜひ変えていただきたいと思います。

○岸田国務大臣 第三国定住による受け入れの対象を拡大するということについては、現在までの受け入れ経験等を踏まえて、関係省庁とも連携しながら適切に判断していきたいと思います。

ただ、その背景としまして、やはり難民のさらなる受け入れに対する国民的な理解の醸成、これもあわせて不可欠なのではないかと思います。こうした国民の理解の状況も見ながら、ぜひ、どこまで拡大することができるのか、関係省庁で引き続き適切に判断をしていきたい、このように考えます。

○中川(正)委員 最後にそこのところを言っておきますが、第三国定住がモデル事業で5年間やった、その後モデル事業が外れて、一般的な事業にしましょうよというときに、その国民的理解ということも含めて、この事業を通じて、それを各地域に醸成していくということ、そのことも大事だねということになってこの事業が延長された、延長というよりも、本格的なものになったという経緯があります。

同時に、今言ったように、ミャンマーだけに限られているので、これを使い勝手をよくして、そして、それぞれ外交的な戦略も含めてこれを使っていくということ、これは、両方にとって、国民の意識をそこへ向けて持っていくということと、同時に、外務省の海外戦略としてもこれは使えるツールだというふうに思いますので、もう一つしっかりこれに目を向けていただきたいというふうに思います。

それから、もともと、日本で難民として申請を上げてくる人たち、これが今、10,901人ですか、申請者としてあるんですね。再申請ということになると、その分、在留の許可がおりて、申請している間は、そのまま、いわゆる援護費というんですか、手当も出るし、あと、6カ月以降では働けるという枠組みに今なっています。これは国際基準で、そのように日本の中でも国際基準に当てはめた形の対応をしているということ、これは評価をしたいというふうに思うんですが。

中身を見ていると、再申請あるいは申請をしてきている人たちのもともとのステータスというのが、留学生で日本にやってきて留学生から難民申請で1399人、技能実習でやってきて技能実習から難民申請をするという形になっていった人たちが1,106人、それから、短期滞在で日本にやってきているということは、観光やなんかでやってきてこの申請をするというのが5,395人というようなところが重立ったところで申請者としてあるということなんですが、この背景に何があるかということをそろそろ日本のいわゆる入管政策としても考えていかなきゃいけないというふうに思います。

これは、基本的には、みんな働きに来たいんですよ、日本に。働きに行きたい、だけれども、単純労働では、日本の今の制度としてはこれを受け入れることはしていないということですから、必然的に技能実習でということ、あるいは留学で。留学で来て、大学に行きたい、あるいは日本で本当に勉強したいという人たちもいます、しかしその中には、アルバイトで働けるということであるとすれば、それでもって働きたいんだという人たちも多く見受けられるということ。

それで、あとは、実は、日系というその枠組みの中で来る人たちもいます。これは、本来は、いわゆる身内に会いに来るとか、あるいは日本に少し滞在して、もともと日本がもとだからというので来る人たちなんですが、その人たちは、しかし目的は出稼ぎということで来る。しかし、出稼ぎということからだんだん滞在が長くなって、恐らく、日本へは定住をしていく人たちが今ふえてきている。その子供たちが次どうするかという課題としてある、そういう日本の国内の現状があるんですね。

これを見ていると、申請をして来る人たちの人数というのが年々大きく増加をしてきています。恐らく、これからも、さっきのような趣旨というか、日本で難民申請をしていくという人たちの意図といいますか思いというのをしんしゃくすれば、恐らくこれからもふえていくんだろうというふうに思うんです。平成24年から平成28年まで、例えば24年時点では2,545人だったんですが、それが3,2605,0007,586、今1万人を超えてきました。まだまだふえてくるだろうというふうに思います。

そうした問題点を指摘した上で、海外からこういう日本の状況を見ても、難民だけではなくて、海外の人たちを受け入れる仕組みといいますか、包括的な戦略、それから包括的な政策が、必ずしも正しく理解をされていない。そのもとをつくっているのは、本音と建前が違う、本当は働きに来たいんだけれども、違った名目でみんな受けるというような形になっているというところが、一つ大きな問題点として指摘ができるんだろうというふうに思うんです。

そういうことを少し考えていただいた上で、外務省が、これをいわゆる国際標準化するというか、改めて、この日本の国の開き方、海外に対する足元の国の開き方を考えていく上で、大臣としては、今の現状を、私が説明したその現状というのを、どのように受けとめていただいて、国際的に見ても、どの方向に持っていくというのが国の形としていいだろうかという考え方を、ひとつ披瀝をしていただければありがたいというふうに思います。

○岸田国務大臣 今後の我が国のありようを考える際に、やはり何といっても国民の意識の醸成というものが大事だと考えます。

そもそも、外国の方々を受け入れるに当たって研修制度というものがあるわけですが、それ以外に、難民もあれば、さらに言うと、さまざまな受け入れの形としては移民というようなものもあるわけですし、そういった、国際的に見ても、外国の方を受け入れる制度というのはいろいろな段階があるわけですが、日本の現状は、今委員の方からも御指摘があったような状況にあります。これを、さまざまなレベル、段階に広げる、あるいは引き上げていく、こういったことを考える際に、やはり何といっても重要なのは国民の意識であり、我が国の社会として、こういった外国の方々をどれだけ自分たちの社会に受け入れる覚悟があるか、そういった意識を持てるか、こういったことが大変重要なのではないかと思います。

こうした国民の意識の醸成を見ながら、我が国として、外国の方々を受け入れる制度について具体的に考えていく。こうした二つは、やはり並行して考えていくべき課題ではないか、このように考えます。

○中川(正)委員 それが政府の公式見解に近いものなんだろうというふうに思います。だから、移民という言葉も使わないし、真っ向からこの問題に対してどう議論するかというのを表に出してこないということだと思うんですね。国民の気持ちがちゃんとした形で醸成されなきゃいけないということが前提にあるよということだと思うんです。

ところが、現実は、海外から人は入ってきています。恐らく、今の日本の人口構造、あるいは、特に日本が豊かであるということ等々を含めると、これは好き嫌いにかかわらず海外から入ってきます。いろいろな、いわば言いわけみたいな名目はつけていますけれども、実質的には、単純労働も含めて、もう既に日本には200万人以上の人たちが入ってきている。これはまたまたふえていくという、なし崩し的移民状態に入ってきているということだと思います。

そのことに対して、私たちはもっとしっかりした意識を持って、この国をどのように開いていくかという議論は、やはり表でしなきゃいけないときに来ているんだというふうに思います。そのことをちょっと指摘をさせていただいて、時間が来たので、終わります。

一遍注目をしてみてください、この分野。よろしくお願いします。

   
  参照:国会会議録検索システム