東京入国管理局長 殿
意 見 書
2009年12月14日
別紙目録記載の申請者らに係る、在留資格変更許可申請について、当職らは以下の通り意見を述べる。
弁 護 士 枝 川 充 志
弁 護 士 加 藤 桂 子
弁 護 士 近 藤 博 徳
弁 護 士 濱 野 泰 嘉
弁 護 士 本 田 麻奈 弥
弁 護 士 渡 辺 彰 悟
意見の要旨
申請者らの在留資格変更許可申請を許可し、「定住者」の在留資格を付与されたい。
意見の理由
第1 難民認定手続において不認定処分とともになされる在留特別許可により「定住者」の在留資格を付与される者と、「特定活動」の在留資格を付与される者があること
1 申請者ら
申請者らは、いずれも、かつて難民認定申請を行った者であり、難民不認定処分(若しくは異議申立却下処分)と同時に出入国管理及び難民認定法(以下、法という)61条の2の2第2項により在留を特別に許可するとして、「特定活動」の在留資格を付与されたものである。
2 在留特別許可により付与される在留資格の差異の存在
(1) 法61条の2の2第2項により在留を特別に許可された者のなかには、申請者らのように「特定活動」の在留資格を付与される者と、「定住者」の在留資格を付与される者とが存在する。かかる別異扱いは、2005年に改定された難民認定事務取扱要領(以下、「取扱要領」という)の下記の規定に依拠する。
記
難民認定事務取扱要領
第7章 在留資格にかかる許可
第1節 在留資格にかかる許可(法第61条の2の2)
第5 審査並びに在留資格及び在留期間の決定
4 本省入国管理局から、申請者を難民と認定しない旨の通知があったときは、地方局等の長は、速やかに、第2の3による調査の結果に基づいて当該申請者の在留を特別に許可すべき事情があるか否かを審査し、許否を決定する。この場合において、在留を特別に許可するときは、原則として、「入国・在留審査要領」第12編を準用して、在留資格及び在留期間を決定する。
(注)@ 省略
A 国籍国又は居住国に帰国することが困難であるとして本邦での在留を認めるものについては、次の通り在留資格を決定し、在留期間は「1年」とする。
・本邦において報酬を受ける活動又は収入を伴う事業を運営する活動を行う者にあっては、在留資格「特定活動」、指定活動「国籍の属する国又は常居所を有していた国において生じた特別な事情により当分の間本邦に在留する者が報酬を受ける活動」又は「国籍の属する国又は常居所を有していた国において生じた特別な事情により当分の間本邦に在留する者が収入を伴う事業を運営する活動」を決定する。
・報酬を受ける活動等を行わない者にあっては、在留資格「特定活動」、指定活動「国籍の属する国又は常居所を有していた国において生じた特別な事情により当分の間本邦に在留する者が行う日常的な活動(収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を除く。)」を決定する。
B 入国後10年を経過し、他の法令違反がなく安定した生活をしている場合には、「定住者」の在留資格を決定して差し支えない。
(2) 以上の通り、法61条の2の2第2項により在留を特別に許可する場合において、その者に「特定活動」の在留資格を付与するか、「定住者」の在留資格を付与するかを、その者が入国後10年を経過しているか、及び他の法令違反がなく安定した生活をしているか、を主要な判断要素として決定する、というのが「取扱要領」に記載された方針である。
(3) 申請者らはいずれも日本に入国後1年8ヶ月乃至20年を経過した者であるが、いずれも「定住者」を付与されず、「特定活動」を付与されたものである。
第2 在留特別許可により付与される在留資格に差異を設けることの不合理性
1 難民認定を受けた者と難民と認定されず法61条の2の2第2項により在留を特別に許可された者との間で在留資格に差異をもうけることの不合理性
難民と認定された者が在留資格を有していない場合には、法61条の2の2第1項により「定住者」の在留資格が許可される。これに対し難民とは認定されなかったが法61条の2の2第2項により在留を特別に許可された者に対して付与される在留資格については、上述の通り取扱要領において「特定活動」又は「定住者」とされている。
しかしながら、難民とは認定しないものの法61条の2の2第2項により在留を特別に許可するというのは、当該難民申請者の具体的な事情に基づき、「国籍国又は居住国に帰国することが困難である」と判断されたからに他ならない。すなわち、本国に強制送還した場合に何らかの生命身体財産への危険が生じるおそれがあるために本国への送還をとどめ日本に在留させるという点で、難民と法61条の2の2第2項により在留特別許可を得た者とは全く同じである。
例えば申請者らビルマ国民について言えば、一方でビルマ政府による国民に対する広範な人権侵害が継続的に行われていることを前提としつつ、他方で法61条の2の2第2項により在留を特別に許可される者と許可されず退去強制令書が発付される者とが存在する、という事実に照らせば、法61条の2の2第2項の在留特別許可が、当該外国人に属する事情に起因して生命身体財産への危険が生じるおそれがあると判断される者に対し認められていることは明らかである。
したがって、法61条の2の2第2項により在留を特別に許可する者に対する保護の必要性は、難民と全く同じというべきである。
2 難民と認定されず法61条の2の2第2項により在留を特別に許可された者の間で入国後の期間の長短によって在留資格に差異をもうけることの不合理性
「取扱要領」は、法61条の2の2第2項により在留を特別に許可する者のうち「特定活動」を付与するか「定住者」を付与するかの主要なメルクマールとして、入国後10年を経過しているか否かを挙げている。
しかしながら、そもそも本国に送還した場合にはその者の生命身体財産に対する危険が生じるおそれがあるとして日本への在留を認めた者について、その在留資格を「定住者」と「特定活動」に区分すべき合理的な理由はない。
また、これまで国は、非正規在留の期間が長いほどその者の法違反の度合いは高く、悪質であると一貫して主張していたことと対比すると、「取扱要領}が非正規状態であっても事実上日本での在留期間が長期であればより安定した在留資格(「定住者」)を付与する、とするのは首尾一貫せず、明らかに矛盾した姿勢である。
第3 「定住者」の在留資格を認められないことによる不利益
申請者らに「定住者」の在留資格が認められないことにより、次のような現実的な不利益が生じる。
生命身体財産への危険を回避するために申請者らをビルマに送還するべきではない、との判断は、難民認定を受けた者や、法61条の2の2第2項により「定住者」を付与された者と何ら変わりがないのに、日本での在留資格に差異をもうけ、その結果以下のような不利益を甘受させることには合理的根拠はない。
1 生活保護が受けられない
(1) 外国人に対する生活保護制度の適用(準用)基準
ア 外国人に対する生活保護制度の適用については、生活保護法1条及び2条により制度の適用対象外であり、原則として法による保護はうけられない、とされている。
しかし他方で、1954(昭和29)年5月8日付社初第382号厚生省社会局長通知により、「外国人は法の対象とならないが、当分の間、生活に困窮する外国人に対しては一般国民に対する生活保護の決定実施の取扱に準じて」保護を行うとされた(保護の準用)。
そして、1990(平成2)年の口頭指示により、保護の準用の対象となる外国人は、適法に日本に滞在し、活動に制限を受けない永住、定住等の在留資格を有するものとされ、具体例として
@ 「出入国管理及び難民認定法」(以下「入管法」という。)別表第2の在留資格を有する者(永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、及び定住者)
A 「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法」上の特別永住者
B 入管法上の認定難民
が挙げられた。
イ 以上により現状では、難民認定された外国人については生活保護法が準用され、また、難民不認定処分若しくは異議却下処分とともに在留特別許可により「定住者」の在留資格が付与される外国人についても生活保護法が準用されている。
(2) 問題点
ア 「特定活動」の在留資格が付与された場合
しかし、法61条の2の2第2項による在留特別許可により、前述の「特定活動」の在留資格が付与された(すなわち本件申請者ら)の場合、上記@乃至Bに挙げられた生活保護法の準用対象のいずれにも該当せず、したがって生活保護の準用をうけられないという不利益的取扱が生じることになる。
イ 2009(平成21)年度の生活保護基準改定
この点に関し、2009年度の生活保護基準改定とともに20年ぶりに改訂された「生活保護法別冊問答集」(厚生労働省社会・援護局保護課作成)の「問13―32」の「なお書き」では、上記@乃至Bの準用基準に加え、新たに「入管法別表第1の5の特定活動の在留資格を有する者のうち日本国内での活動に制限を受けないもの等の上記@〜B以外の者について疑義がある場合には、厚生労働省に照会されたい。」との文言が付加された。この文言の付加により、上記@乃至Bの基準該当者以外であっても「特定活動」の在留資格を有する外国人は、その指定活動の内容次第では生活保護の準用が可能になった。
しかしながら、「取扱要領」は、法61条の2の2第2項による在留特別許可により「特定活動」を付与する際の指定活動を、「報酬を受ける活動」「収入を伴う事業を運営する活動」「日常的な活動(収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を除く。)」と制限している(実際にも、申請者らはいずれも上記3種類のいずれかの活動内容の指定を受けており、活動内容に制限を受けていない者はない)。したがって、在留特別許可によって「特定活動」を付与された者は上記「なお書き」には該当せず、結局生活保護の準用を受けられない。
ウ 小括
以上の通り、難民不認定処分を受けつつ、在留特別許可により「定住者」が付与された場合には生活保護法が準用されるが、「特定活動」が付与された場合には生活保護法の準用がされないという「違い」が生じており、この「違い」は生活保護基準改訂及び問答集の改定によっても何ら解消されていないのである。
(3) まとめ
このように、本国に送還した場合にはその者の生命身体財産に対する危険が生じるおそれがあるとして日本への在留を認めた者(難民認定者及び法61条の2の2第2項により在留特別許可を得た者)のうち、「特定活動」を付与された者に限って、生活保護法の準用が認められない、という死活的な問題を生じさせているのである。
2 家族の呼び寄せができない
(1) 難民と認定された者の中には、本国に家族を残している者が少なくない。難民は、迫害のおそれがあるために本国に帰国できないのであるから、家族と再会するためには、その家族を難民が居住する国に呼び寄せる以外に方法はない。そして、このような事情は、難民とは認定されなかったが「国籍の属する国又は常居所を有していた国において生じた特別な事情により当分の間本邦に在留する者」すなわち法61条の2の2第2項により「定住者」あるいは「特定活動」を付与された者についても全く同様である。
しかしながら、本国の家族を呼び寄せるにあたって、「定住者」と「特定活動」とでは、手続上以下のような大きな差異が存在し、「特定活動」を付与された者が家族を呼び寄せることは非常に困難であり、あるいは多大な負担が生じている。
(2) 難民と認定された者、あるいは在留特別許可によって「定住者」が付与された者
「定住者」の配偶者又は子(以下「配偶者等」という)の呼び寄せについては、「出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の規定に基づき同法別表第二の定住者の項の下欄に掲げる地位を定める件」(平成2年法務省告示第132号、以下「定住告示」という)第五項ロ及び第六項ロで、上陸許可時の「定住者」付与の対象者とされている。
したがって、「定住者」を付与された者は、本国の配偶者等を呼び寄せるために、配偶者等が定住告示第五項ロ及び第六項ロに該当するとして在留資格認定証明書交付申請を行うことができ、同証明書の交付を受けることによって本国の配偶者等を日本に呼び寄せることが手続上可能である。また、呼び寄せた配偶者等には上述の通り「定住者」が付与されるので、就労を含め日本国内での活動内容に制限はない。
(3) 「特定活動」が付与された場合
ア 在留資格認定証明書交付による上陸の可否について
在留資格認定証明書交付申請が認められるためには、呼び寄せをしようとする配偶者等について上陸時に付与すべき在留資格を特定する必要がある。
しかしながら、「特定活動」を付与された者の配偶者等は定住告示の対象に該当しない。また、家族滞在(法別表第1、四の表)にも該当しない。
さらに、これらの「特定活動」を付与された者の指定活動の内容は特定研究活動(法別表第1、五のイ)あるいは特定情報処理活動(同ロ)にも該当しないため、その配偶者等は法別表第1、五のハの「特定活動」にも該当しない。
このように、「特定活動」を付与された者の配偶者等に対し、その者の上陸に際して付与することが可能な定型的な在留資格は存在しない。
また、指定活動を「○○の扶養を受ける者としての活動」又は「日常的な活動(収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を除く。)」とする「特定活動」といった、その行うことができる活動の内容が法令・通達等に規定されていない在留資格の付与を在留資格認定証明書交付申請手続によって求めることも実務上困難である。
このように、「特定活動」を付与された者が、在留資格認定証明書交付申請等の通常の手続によって本国の配偶者等を呼び寄せることはほとんど不可能となっている。
イ 「短期滞在」による上陸の可否について
したがって、「特定活動」を付与された者が本国の配偶者等を呼び寄せ、日本国内で家族として同居生活を行うためには、配偶者等が本国の日本大使館・領事館において日本への渡航を認める査証を取得して来日し、空港等で上陸審査を受けて上陸する、という方法を採らざるを得ないことになる。この場合、上陸時に認められる在留資格は「短期滞在」である場合がほとんどである。例外的に、親族訪問を目的として行った査証申請に対し、現地大使館が外務省を通じ法務省との間で査証協議を行い、配偶者等の事情を考慮して「特定活動」での上陸が可能なように査証を発給し、上陸時にも「特定活動」が付与される、という取扱があり得なくはない。しかしながらこのように関係者の事情を考慮して査証協議を行うかどうかは現地大使館・領事館の裁量的判断に委ねられており、手続上の確実性は皆無である。
したがって、やはり大多数の配偶者等は、親族訪問を目的として査証を取得し、「短期滞在」の在留資格で上陸許可を得るという方法しかないことになる。
しかしながら、配偶者等が「短期滞在」で上陸する方法には以下のような問題点がある。
@ 査証の発給が不確実である
査証の発給の判断は申請者の渡航目的の真否・日本滞在費及び帰国費用支弁の可能性など諸々の事情を考慮して判断されるものと推測されるが、発給の可否は現地日本大使館・領事館の判断に委ねられ、発給拒否の理由を確認する制度も、また発給拒否を争う法的手段もなく、配偶者等の来日のための手続的保障が皆無である。
A 虚偽申告を疑われる危険性あり
配偶者等は、「特定活動」の在留資格で日本に居住する親族と日本で同居生活を営むために来日することを企図している。しかしながら、「短期滞在」が通常予定しているのは観光旅行あるいは一時的な親族訪問であり、査証申請に際し上記のような真の意図を明示すると却って査証発給がされない可能性が高い。そのため査証申請に際しては渡航目的を「観光」あるいは「一時的な親族訪問」とせざるを得ないが、これを以て虚偽申告であると疑われ、査証発給を拒否されたり、日本に到着したものの上陸審査の際に上陸を拒否される危険性がある。実際にも、配偶者等が「短期滞在」で入国しようとしたところ、入国後に在留資格の変更を企図していると疑われ、上陸を拒否された事案も生じている。
B 在留期間が短く、就労も認められない
仮に運良く「短期滞在」での上陸許可を得られても、付与される在留期間は最大で90日であり、更新が認められても最大半年程度にすぎず、家族が共に継続して日本で生活を送ることはできない。
また、日本に在住する外国人の家族が生存に必要な収入を得ていくためには、夫婦で稼働することが必要不可欠であるのが現実であるが、「短期滞在」は就労や事業活動など収入を得る活動を認めていないため、この点からも配偶者等が「短期滞在」のままでは安定した生活を継続することは不可能である。
C 他の在留資格への変更が困難である
そのため、「短期滞在」の在留資格を、長期の在留が可能で、かつ就労が許される在留資格に変更する必要がある。しかしながら、「短期滞在」から他の在留資格への変更は、「やむを得ない特別の事情」がなければ認められないとされており(法20条3項但書)、法律上在留資格の変更は困難である。しかも変更許可申請の際に「家族との長期的な同居という目的を秘して上陸許可を得た」として虚偽申請による上陸と見なされ、更新不許可とされるのみならず出国のための準備期間すら与えられず、超過滞在状態にされてしまう危険すらある。
これを回避するためには、在留資格変更許可申請に際し、弁護士など専門家に依頼し、事情を詳しく説明し、在留資格を変更し引き続き在留を認めるべき必要性を証明する資料や書面を提出する必要があるが、これらに係る費用は当該外国人らにとって相当の負担ならざるを得ないうえに、在留資格の変更が認められる保障はない。
ウ 以上のように、「特定活動」を付与された者が配偶者等を呼び寄せる場合には、「定住者」を付与された者とは比較にならないほどの様々な困難が伴うのである。
第4 結論
1 2004(平成16)年の入管法改正により、難民認定を受けた非正規在留外国人で一定の条件を満たす者に対しては「定住者」の在留資格を付与することとし(入管法61条の2の2第1項)、同時に難民認定をされなかった者あるいは難民と認定されたが上記一定の条件を満たさず「定住者」の在留資格を付与されなかった者に対しては、諸般の事情を考慮して在留特別許可をすることができるとされ(同条2項)、この場合にも運用上「定住者」が付与されていた。
ところが2005(平成17)年以降、「取扱要領」によって「特定活動」が付与される者が現れるようになり、その結果、生活保護法の準用が受けられない、また家族の呼び寄せができない、という事態が発生するようになった。つまり、もともとは認定難民と同様の利益の享受が認められていた在留特別許可の対象者のうちの一部が、「取扱要領」によって除外されるようになったのである。
2 そもそも、法61条の2の2第2項による在留特別許可制度は、庇護の必要な人間に対する人道的な配慮の観点から設けられた制度である。
にもかかわらず、日本での滞在期間の長短により身分上の違いを生じさせ、ひいては生活保護法が準用されるか否かという当人にとって死活的な問題を生じさせ、あるいは家族の呼び寄せを困難にして家族結合の権利を侵害するなど人道的に問題のある扱いをすることは、在留特別許可制度の趣旨を没却することに他ならない。
難民と認定された者も、難民と認定されず法61条の2の2第2項により在留特別許可を受けた者も、国籍国に帰還することができず、日本で生活基盤を形成しようとしているものである点では全く変わりはない。そしてその日本での在留が(本国での生命身体財産への危険が取り除かれるまでの)長期に及ぶ可能性があることも、難民認定を受けた者と在留特別許可を受けたもとで何ら変わりはない。さらに、「取扱要領」が法61条の2の2第2項により「特定活動」を付与すべき対象者を「国籍の属する国又は常居所を有していた国において生じた特別な事情により当分の間本邦に在留する者」としていることからも明らかなように、法務大臣及び実際に在留特別許可をする地方入国管理局長も彼らの在留が長期に及ぶ可能性があることを十分に認識し、許容しているのである。
このように、当初から長期間日本に在留することが予定され、また本人も希望しているのであるから、法61条の2の2第2項により付与すべき在留資格も「定住者」であるべきである。従来このような取扱で運用されてきた以上、あえて「違い」を設ける合理的理由はない。
3 以上のような在留許可制度の趣旨、「定住者」と「特定活動」という取扱の違いに合理的根拠がないこと、生活保護を受けることの必要性、従来「定住者」とされていた運用実態等を踏まえ、申請者らの本件申請を認め、「定住者」の在留資格を付与すべきである。
以 上
全国難民弁護団連絡会議 テーマ別:特定活動
2010年5月17日
各位
在日ビルマ人の「定住者」変更の集団申請(報告)
在日ビルマ人難民申請弁護団
代 表 弁護士 伊 藤 和 夫
事務局長 弁護士 渡 邉 彰 悟
(担当) 弁護士 近 藤 博 徳
当弁護団は、2009年12月14日、在日ビルマ人37人(22家族)の「特定活動」から「定住者」への在留資格変更許可申請を集団申請しましたが、本日、東京入国管理局から結果の連絡を受けましたので、下記のとおり報告します。
記
【結 果】 ○許可(定住者1年) 16名(9家族)
○不許可 19名(11家族)
○取下げ 2名(2家族)
※取下げは、申請者の理由による
【判断基準】 @日本の在留期間が正規・不正規問わず合計10年を超す者
A「特定活動」取得から3年を経過した者
B家族のうち1名が上記@ないしAを充たしていれば家族全員に「定住者」変更を許可する
C収入要件は不要
※上記基準は東京入管だけでなく全国一律の基準
これまで特定活動から定住者への変更が積極的に行われていなかったこと、変更の判断基準が曖昧であったことを考えると、今回、16名(9家族)が同時に変更許可を受けるとともに、法務省が全国一律の判断基準を示したことは、大きな前進と言えます。
しかしながら、「定住者」変更不許可の申請者たちは、今後も「特定活動」の在留資格のままであり、生活保護が受けられず、家族の呼び寄せもできないなど多くの不利益があります。そもそも、難民認定手続において不認定処分とともになされる在留特別許可制度は庇護の必要な人間に対する人道的な配慮の観点から設けられた制度ですから、在留資格も「定住者」であるべきで、従来このような取扱で運用されてきた以上、あえて「違い」を設ける合理的理由はありません。
当弁護団としては、今後も、「定住者」の在留資格の付与・変更を求めていくとともに、「特定活動」の在留資格を有する者であっても、生活保護や家族呼び寄せができるよう、引き続き取り組んでいきます。
以 上